第35回 日本毒性病理学会総会および学術集会の会長を務めます、中外製薬・研究本部の鈴木雅実です。本学会総会・学術集会は2019年1月31日(木)・2月1日(金)の2日間、タワーホール船堀(東京都江戸川区)にて開催します。また、1月30日(水)には、スライドカンファランス、ならびに、日本毒性病理学専門家認定試験における問題解説を開催します。
毒性病理学では、医薬品、農薬、環境物質など様々な化学物質により惹起される病態と、その発現機序を病理学的に解明し、化学物質のヒトへの影響を評価しています。その利点は、比較的簡便な手法で、全身の臓器・組織・細胞を観察・評価することができ、永年培われてきた学問体系を理解・利用することで、病態の原因、経過、発生機序、全身への影響等を推測することができることだと思います。一方、病変の強さ、拡がり等を定量的に解析することは難しく、また、病態の原因、発現機序などの推測は可能であるものの、結論を導くことが難しいという欠点もあります。
近年、遺伝子発現解析、タンパク質発現解析の進歩により、組織・細胞の変化を分子生物学的視点から解析・理解できるようになりました。さらに、ゲノム編集技術の発達により、遺伝子ならびタンパク質発現を人工的に制御し、組織・細胞の病理形態的変化と分子生物学的変動との関連を追及することができるようになりました。また、イメージング技術の進歩により、スナップショットの病理組織像の意味を、時空間的な組織・細胞の変化として解釈できるようになりつつあります。このような、「医学・生物学の進歩」を、「毒性病理」研究で利用していくことは、永年培われてきた毒性病理の学問体系に磨きをかけるとともに、病理学的変化の解釈に新たな視点を加え、毒性病理学的研究手法の弱点とされる部分を克服していくものと期待しています。そこで今回の学術集会のテーマを「医学・生物学の進歩と毒性病理」としました。遺伝子発現解析、イメージングなど第一線でご活躍されている先生方による特別講演・教育講演・シンポジウムなどを計画しており、今後の毒性病理学を発展させる原動力のひとつになれればこの上ない喜びです。
最後に、本学会総会・学術集会にご参加いただきました会員の皆様が、それぞれ将来の毒性病理学の発展に夢と使命を見出せるような、楽しく意見交換と交流を行う場にしていきたいと考えています。多くの皆様方のご参加を心よりお待ちしております。